中国映画『薄氷の殺人』観てきました。
『薄氷の殺人』を観る目的で映画館行ったわけじゃなくて、なにげなく入った映画館で、開演時間まで待ちがなくてすぐ観れそうな映画の中でタイトルとビジュアルが刺激だったのでいっぱつで魅かれちゃいました。2014年の64回ベルリン国際映画祭で、最高賞の「金熊賞」と「男優賞」をダブル受賞と聞いて、期待感があがりまくりです。
そもそも、わたくし頻繁に映画を観るほうではなく、年に3〜4回映画館に行く程度です。しかも中国映画なんて、DVDとかビデオで『キョンシー』観たくらいでしょうか。あとは『恋する惑星』か〜とおもったら、あれは香港映画でした。なので中国映画を映画館で観るのは初体験です。
ストーリーはありがちだが!!
いわゆるミニシアター系映画っていうんでしょうか。大箱の映画館では公開しないようなものです。私が観た場所も100人程度しか入らない映画館でした。
公式サイトや予告動画みていただけばわかることなんで、言っちゃいますが、おおまかなあらすじは、バラバラ殺人事件と被害者に関わる美人な女性、その事件を追う元刑事という、なんともありがちなストーリーです。
予告編どうぞ。
ただの猟奇殺人のサスペンスってわけではなく、人間ドラマあり中国の経済発展の背景ありの映画で、主人公の刑事のジャン(リャオ・ファン)の人間を描くドラマでもあります。
あるきっかけにより殺人がおこり、その殺人によって出会うことのない人が出会って事件にまきこまれた人々の運命がからみあっていく。
文字にしていまうとありがちなストーリーですが、監督のディアオ・イーナンを通して描く世界観と中国の時代背景が、なんともいえない緊張感を出しています
映画でしかありえない作品
たぶん、この『薄氷の殺人』を小説などの活字で読んでも面白くないでしょう。起こることはありがちなので。2時間のテレビドラマとして放送しても良さは半分くらいしか表現できないでしょう。この映像表現は、映画ならでは。
殺人事件とその犯人を追うというストーリーのベースなので、とにかく緊迫したシーンが多いです。登場人物が何かをじっととらえる目線と表情だけを映して、視線の先になにがあるのかと、そそられる手法で緊迫感をそそります。
異国知らない土地で、ちょっと貧しめの人たちが住むような郊外って、人がまばらだったり夜だと街灯が薄暗かったりちょっと恐怖感あるじゃないですか。その不安感もあいまって恐怖をそそるのです。
異国な不安感は、映画館という密閉された空間だからこそ、「そそり」が効いていました。
そそられる恐怖感と対照的に、事件を追う刑事の人間臭さと、被害者の妻の美しさ。中国の発展によるちょっとした社会問題も含ませていますが、メインのストーリーを邪魔するほど問題提起してこないので、モヤモヤすることもなく、映画を観た後の爽快感もあるし、ちょっと悲しくもある。
ストーリーがいい、とか、技法がいい、とかじゃなくて
「いい映画だな〜」と素直に感じました。
映画の質・内容に対してこの邦題は失敗
観たあとで強く思ったことは、この邦題にすごく不満があります。
『薄氷の殺人』
このタイトルと、この映画のメインである猟奇殺人てところから、サスペンスホラーっぽい内容なのかな?って思いませんか?自分も少しそこを期待して観たので、ちょっと騙された感は否めないです。いや、べつに、監督がもともとこのタイトルをつけていたのなら何も不満はないです。作品をつくった人がつけたタイトルなら、それでいいと作った人が判断したものですから。
しかしです。中国版のタイトルは「白日焔火」
直訳すると「白昼の花火」。邦題は、このままの方がよかったんじゃないですかね。
公式サイトにタイトルについて監督のコメントが掲載されています。
題名についてイーナン監督は「石炭と氷は現実だ。白昼の花火は現実離れしている。それらは同じコインの裏表なんだ」と語っている。
まさにこの作品の主題は「殺人」ではなく、コインの裏表ってことなんだと思います。
邦題の『薄氷の殺人』とはどういうことなのでしょうか?「薄い氷を踏むようなあやうい殺人」という意味なのでしょうか。殺人なんてそもそも薄氷を踏むような危ういことでしょう。
ちなみに英語タイトルは『Black Coal, Thin ice』で、『白昼の花火』よりももっとこの映画にしっくりくるタイトルだと感じます。 殺人と美人。無骨な刑事とかよわい女性。貧困層と富裕層。まさに『Black Coal, Thin ice』。
主演のグイ・ルンメイ(GWEI Lun Mei)の美しさに圧倒された
いやいや、美人でした。この方、初めて知りましたが、終始物憂げな表情をうかべる被害者の妻という顔から一転、後半の観覧車のシーンでの色っぽさにやられました。